コルニクス
「これ、私のお気に入りのティーカップだから、うっかり手を滑らせる、なんてことはよしてね」
紅茶はポットの長い注ぎ口から連なって出ていき、
お上品にお皿に乗っかっているカップの側面に着地して
泡もたてずにゆったりと渦を巻いた。
「それ、振り?」
「断じて違うわ」
俺の前に紅茶がそっと置かれる。
「そんな特別なカップ、俺なんかにださなければいいのに」
「ウィンクはカップを割るつもりなの?」
「いや、断じて違う」
「なら別に気にすることないじゃない」
でも、お気に入りのカップなら棚に飾っておけばいい。
特別なお客にお茶をだすときに使えばいい。
…俺がその特別なお客だったりして。