コルニクス

「じゃ、行ってき」

「行ってら~」

クロは操縦席に乗り、何故か"ます"を省略化してデンスと言葉を交わした。

デンスとは、怪我人のこと。

テラ・ファミリアの一員になったので、改めて名前で呼ぶことにした。

プシューと音を立て、旋回無しで上昇する機体。

吸い込まれそうなほど深く黒い立派な翼。

目の前に見え、温もりを感じるたくましい背中。

すべてが懐かしい。

これから銃声の飛び交うであろう空に行くのに、こんな穏やかな心持ちでいいのだろうか。

「じゃあこれ、命綱」

背中を眺めていたら、不意にふり返ったクロと目があって、何かを手渡された。

「…え、命綱って?」

< 331 / 575 >

この作品をシェア

pagetop