コルニクス
「じゃ、行ってき」
「行ってら~」
クロは操縦席に乗り、何故か"ます"を省略化してデンスと言葉を交わした。
デンスとは、怪我人のこと。
テラ・ファミリアの一員になったので、改めて名前で呼ぶことにした。
プシューと音を立て、旋回無しで上昇する機体。
吸い込まれそうなほど深く黒い立派な翼。
目の前に見え、温もりを感じるたくましい背中。
すべてが懐かしい。
これから銃声の飛び交うであろう空に行くのに、こんな穏やかな心持ちでいいのだろうか。
「じゃあこれ、命綱」
背中を眺めていたら、不意にふり返ったクロと目があって、何かを手渡された。
「…え、命綱って?」