コルニクス
「なにー?」
私は空気の中に溶け入りそうなクロの声を、
北風とかわりそうなクロの言葉を拾おうと、
耳をクロの背中にくっつけた。
──────あたたかい。
「ありがと、助かった」
背中を振動して伝わってきたクロの小さな声は、私の体を中からあたたかくした。
外からも中からもあたたまって、私はすれ違う北風などに身を縮めなくても済むくらいぽかぽかしていた。
「…恩、少しでも返せたかな」
クロが恥ずかしそうにぼそっと私にお礼なんか言うもんだから、
いつものクロとのギャップにほんわかしつつも照れてしまった。
「だから、俺はセルを空に連れ出しといて見捨てたんだから、恩なんか感じる必要ないって」