コルニクス
「防犯ホイッスル?笑」
「あほ」
ブロロロロロ─────
いきなり、近くでエンジンの音がした。
「もうお別れだ」
視界が一層ぼやける。
「元気でな、セル」
なのに視界が急に晴れる。
一筋、二筋と私の頬を熱いものが伝う。
「泣くなって」
クロの大好きな手が、
大好きなクロの手が、拭う。
なんて言おう。
元気でね。
さよなら。
また会える?
……違う。
「またね…」
やっとのことで出した声は、自分の声とは思えないほど低かった。
「うん」
クロがにっこり笑う。
私はそれを完全に晴れた視界で脳裏に焼き付ける。
瞼を閉じれば浮かぶように。
「また、会おうね!」