コルニクス
「お若いようだけど、軍人さんかしら?」
「はい。人を訪ねて来たのですが…
ここに以前お住まいだったはずの、シアンさんという女性が今どちらにいらっしゃるかご存知ですか?」
俺と老婆は窓越しに話す。
雲が次第にはけ、太陽が俺の顔を含めた辺り一面をじりじりと照りつけた。
「シアンさんなら…2、3年ほど前に他界しましたよ」
「…え」
死んだ?
「知り合いだった?まさかお母さんではないわよね?」
「あ、いえ。どうもありがとうございました」
老婆は太陽の中でにこりと笑い、俺にお辞儀をして立ち去った。
そのあと一応引き出しの中をまさぐってみたが、物という物が見あたらなかった。