コルニクス
◆THREE
クロのことを忘れようとすればするほど、クロといた時間を鮮明に思い出してしまう。
悲しみの沼に自ら陥っていくようだった。
今感じているこの風だって、クロの真っ黒な飛行艇に乗ったときに感じたものと似ている。
でも私が乗っている飛行艇は、クロの飛行艇じゃない。
前の操縦席に座っているのは、クロじゃない。
目に涙をいっぱい溜めて見た景色は、余計に涙を溢れさせた。
それでも風は涙を飛ばし、瞬く間に頬は乾いた。
私の目の前の操縦席に座っているのは、たくましいおじさん。
私の真横を別の飛行艇で飛んでいるのは、すらっと背の高いお兄さん。
おじさんとお兄さんが乗っている飛行艇には翼が無い。