コルニクス

でも、クロの言っている恩は、個人的なクルシオさんへのものも混じっている気がした。

「笛の音はきこえた?」

さっきの視線の逸らされ方は傷ついたけど、勇気を出して聞いてみる。

クロは困惑したときの薄ら笑いを浮かべた。

「…聞こえなかった」

グサリと何かが私を貫く。

クロに笛の音が届いてなかったことに傷ついているのではない。

クロが嘘でも聞こえたと言ってくれなかったことに傷ついているのではない。

クロが…わざと聞こえない振りをしているように思えたことに、傷ついた。

「セル、死ぬ覚悟で吹いたんだから~」

ステルラがフォローをいれてくれる。

「違うよ、死ぬ覚悟をしたのはクルシオだよ」

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