コルニクス
「なんたってお嬢さんは今日から、ここ、テラ・ドムスで暮らす空族の一員だからな」
唸ったエンジンの音でおじさんの声はかき消され、
私の耳にはあまり届いてこなかった。
すると飛行艇は旋回しながら降下し、不気味な浮遊感が襲ってきた。
クロの飛行艇のように、プシューと音を出してその場に着陸するわけではないのか。
……ああ。また私はクロのことを考えてしまった。
忘れなきゃ。
いつ会えるか分からないのに。
思い出しては悲しくなるだけなのに。
現実に引き戻されたとき、虚しくなるだけなのに。
そんなこと分かっているのに。
「おい、何ぼさっとしてんだ。とっとと降りろ」