コルニクス
クルシオさんが女性の前に立ち、感謝を述べる。
「いえ、私らどもにはデンス准佐をお救いくださった恩義がありますので」
「デンス准佐ぁ!?」
デンスが私の隣で叫ぶ。
鼓膜がつーんとした。
「退軍時に大尉から准佐に一階級昇進した」
まあ今のお前には階級など不要だろうがな、
といきなり男口調になった女性は、キリッとした美しい顔を綻ばせる。
それは馬鹿にしたような嘲笑ではなく、心からの喜びを含んだ朗笑ととれた。
「申し遅れました。私は担当を承ります、イプサム中佐であります。
何かあれば、何なりと。案内の者、前へ」
この女の人も軍人なんだ。
人を殺すとはとても思えないけど。