コルニクス
私の声はインフィニートゥムの廊下に響き渡り、窓を震わせた。
デンスは肩をすくめて、耳を押さえている。
「意外と反応薄いなと思ったら後からか!油断した。鼓膜つんざかれるかと思った」
「妻って!あの妻!?恋人でも婚約者でもなく、妻!?」
「そう、妻」
奥さんね、と念押しをするデンスが、乱視状態のように重なって見える。
クロが既婚者なわけで、
あのアンジェリカという女性がクロの奥さんなわけで、
アンジェリカさんの旦那さんがクロなわけで、
クロとアンジェリカさんが結婚しているわけで、
当然…愛しあっているわけで?
自分の中の混沌とした感情が渦を巻く。
でも今回ばかりは無理もないと思う。