コルニクス
使用人がかがんでガラスの破片を拾おうとした刹那に飛ぶ怒鳴り声。
それは、俺の後ろから歩いてきた、この使用人の上司らしいおじさんのものだった。
使用人はあわてて立ち上がって頭を下げる。
「大変申し訳ありません、お客様とぶつかってしまって」
「なにを…っ」
「あの、」
今にも使用人を殴りつけそうなおじさんに、俺が話しかける。
「俺が悪いんです。走った状態でいきなり飛び出したから」
俺は別に走っても飛び出してもいないが、
上司が使用人を叱る光景を今ここで繰り広げられても困るから、
どうか穏便に済ませてほしいと願っての行動。
おじさんは俺に「大変失礼しました」と言い、使用人に向き直る。