コルニクス
でも、なんだろう。
無駄に泣きたい。
いつの間にか時は過ぎ、今は晩ご飯を食べ終えた、戌の刻。
ラクリマがクリュさんに衣服を渡しに来るはずの、戌の刻。
私はわけもわからず泣きたくなって、1人、部屋を出た。
「どこ行くんだ」
そうして私は運悪く会ってしまう。
この人に。
「おい、どこ行くんだよ」
答えない私の腕が、がしっとつかまれる。
止めないでよ、もうすぐラクリマが来ちゃうんだから。
「何かあったのか」
心配しないでよ、優しくしないでよ、今泣きたいんだから。
「あ、おい!」
私はクリュさんの腕を振り払って、広い廊下を走る。
クリュさんが追いかけてくるのが音で分かった。