コルニクス
「分からないよ…。私は恋を知らないから…」
そう答えるのが精一杯だった。
クリュさんは私を離す。
「まぁ、俺は別に返事を求めないから。これが恋だろうとなかろうと、伝えたかっただけだから」
優しい口調なのに、どこか無愛想。
この人、本当にクリュさんなんだな…と、まだ何の実感もわいていない自分がここにいる。
「戻ろう、風邪引く」
そう言われてから部屋に着くまで、すごくすごく長かった。
距離も時間も気持ちでさえも。
階段をおりるクリュさんを見つけたラクリマの瞳に、
自分が洗濯して渡したクリュさんのジャケットを着ているセルが映る。
ラクリマは何の感情も無く、ただ理解した。