コルニクス
「言うって何を?」
「ちょっと見てて」
言うと決めたと言っていたのに、
これから何かを言うはずなのに、
"聞いてて"じゃなくて"見てて"なのはなぜだろう?
その理由はすぐに分かった。
クロは私から視線を外し柵のほうに向き直って、一面の空と雲と海で構成された清々しい景色を見据える。
足を肩幅に開いて両手を口の横に添えた。
クロが息をスゥっと吸う音が風に乗って風下にいる私の耳に届き、髪をなびかせた。
「好きだあああああああああ」
「!?」
…ぎょっとした。
「ああー…った……」
クロの雄叫びは次第に勢いをなくし、不自然に途切れた。
「何が!?」
「セルが!」
私が?