コルニクス
「嘘だろ…」
本当に嘘かと思った。
実際に嘘だと思っていて、
切実に嘘であってほしいと願っていた。
それでも、動かない眼前のこの男を見ているうちに、
先刻逃げて行った実感が、急激にわき立っていく気がした。
「ああぁあぁあああぁぁあーっ!!」
どこからこんな声が出たか自分でも分からないくらいのボリュームの言葉にならない雄叫びが、
喉をかっ切ったかのようにあふれだした。
それは部屋中に響き、おそらく外にまでも響き。
俺の中にも響き渡った。
初めて聞いた自分のそんな声は、どうにも悲しんでいるらしく、
何かに負けた気がした。
頭を前に倒し、仰向けになった元帥の腹の上に乗せる。