コルニクス

「え?」

何かしたっけ、私。

「扉の鍵閉めにきたら誰もいないはずの屋上に人がいたんだ、驚かせるなよ」

驚かせるなよ、俺がじじいになる。
ふとよぎる光景。よみがえる声。


何だ、今の。


「…え、鍵閉めるんですか?」

「当たり前。屋上は玄関だぞ」

そっか…すみません。

「復習?」

「あ、はい」

「ステルラが自信満々に言いふらしてた。
自分は完璧に教えた。セルは明日にでも飛ぶって」

「明日飛ぶのか…私」

そんなにすぐ乗りこなせるものなの?

「緊張してんの?」

「いえ、まだ部位の名前しか教えてもらっていないので、実感が湧きません」

「は?」

クリュさんの驚いた声に、私も驚いた。

「部位の、名前だけ?」

「はい。名前だけ…です」

どうかしたのかな?
なんか、嫌な予感が…。

< 71 / 575 >

この作品をシェア

pagetop