コルニクス
私は操縦桿に置いている右手を手前にねじる。
機体が急に下がりだした。
不気味としか言い様がない浮遊感が全身をけばだたせる。
「ばか。逆だ、逆」
そう言ってクリュさんの右手がスロットルを奥にひねる。
機体はスピードも安定感も増し、飛んだ。
そう、飛んだ。
見渡す限りの空と雲と海。
海から顔をだす朝日。
「綺麗…」
綺麗だった。
綺麗じゃ足りなく言い表わせないくらいなのに、
綺麗としか言い様がない光景。
感動のあまり目をみはっているのに目は乾かない。
「お前、泣いてんの?」
クリュさんが横から訊ねる。
泣いてる…?
泣いてるから目が乾かないのか。