高天原異聞 ~女神の言伝~

 不意に意識がまどろみの中から引き戻されたように感じた。
 目が開けられない。
 金縛りにあったように、自分の意志では身体は指一本すら動かなかった。
 意識だけが薄ぼんやりとしていた。
 身体が揺さぶられている。
 さっきまで満たされていた身体の奥が再び貫かれ、満たされている。
 気絶するように眠り込んだ自分を、再び慎也が抱いているのだと、ぼんやり思った。
 それでも。
 自分の身体なのに、そうでないような気がした。
 自分を抱いているのは慎也なのに、慎也でないような気がした。
 もっと懐かしく、切なく、心が震えるような、夢の中の愛しい人に抱かれているような感覚だった。
 もしや今、自分は夢を見ているのだろうか。
 ここは自分の部屋なのか。
 それとも、あの八尋殿なのか。
 
 これは夢だ。

 そう思い込もうとしたが、自分に重なる熱は、夢と思い込むには生々しすぎた。

 甘く熱く自分を揺さぶるこの人は誰なの。
 貴方は、誰なの。

 何度も自分を穿つ欲望に煽られて、沈んでいく意識とは反対に身体は絶頂に登りつめる。
 熱い熱を身体の一番奥で受け止めたとき、自分ではない、自分の中の別の誰かがよりいっそう満ち足りたように感じた。
 そして、美咲の意識は完全に途絶えた。





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