高天原異聞 ~女神の言伝~

 それでも、慎也と話すのが嫌ではない自分もいるのだ。
 もともと頭もいいらしく、知識も豊富だ。
 どちらも本好きなこともあり、司書教諭を交えた読書談義は会話も弾む。
 年下とは思えない読書量には舌を巻くほどだ。
 受験生であるのに、すでに志望大学へのA判定をもらっているらしく、あくせく勉強する必要もないらしいと、慎也をお気に入りの司書教諭が教えてくれた。
 年下でさえなければ、と思うことも一度や二度ではない。
 せめて、ここを利用する一般の利用者であれば、どれほど気が楽だったろう。
 後ろめたさと嬉しさがない交ぜになって、最近は慎也に対する態度がよそよそしくなってしまう。

 この胸の閊えたようなもどかしさは、いつか消えてなくなるのだろうか。



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