高天原異聞 ~女神の言伝~
「許さぬ――過ぎし世では、あやつのせいで妹は無惨にも死なねばならなかったのだ。今さらどのような顔で妹の傍にいられるのだ?」
震える指先。
蒼白な顔。
こぼれる涙。
絶望に満ちたあの表情。
――お姉様……あの方に伝えて……御子は、確かに貴方様の御子であったと。決して国津神の子では御座いませんと……
――そのように言われたのか? そなたの子が国津神の子であると?
あのときの屈辱を、悲しみを、怒りを、永い時が過ぎた今でも、昨日のことのように思い返せる。
自分の半分を、失ったのだ。
その傷は、どれほど時が過ぎても、埋めることも、消すことも、忘れ去ることもできなかった。
あの男神だけは、絶対に許さない。
「私は妹を護る。今度こそ、誰にも奪わせはしない――」