高天原異聞 ~女神の言伝~
閉館時刻になり、すでに館内には美咲と慎也しかいなかった。
「美咲さん、鍵かけるよ」
慎也が一般用の出入り口のところで声をかける。
「私がかけるわ。もう帰って」
「これくらいできるよ」
「だめ。私の仕事よ。さあ、もう出て。手伝ってくれてありがとう。また
ね」
強引に、慎也を一般用の入り口から出すと、内鍵をかける。
校舎と通じる入り口の鍵も確認すると、美咲は館内の電気を消し、事務室に戻る。
ロッカー室からジャケットとバッグを出すと事務室内の電源の消し忘れがないか確認し、給湯室のガスの元栓を閉めて、セキュリティのチェックボタンを押す。
いつもどおりの機械音が鳴るのを確かめ、玄関を出ると鍵を閉め、さらにセキュリティーカードを差し込んでセキュリティセットを完了する。
カードをボックスにしまうと、
「終わった?」
「きゃあ!!」
いきなりかかった声に、美咲は驚いて叫んだ。
振り返ると、慎也が立っている。