高天原異聞 ~女神の言伝~
「女神が独りになる時はないのか?」
苛立たしげな声音がもれる。
「いつでもどこでも国津神の気配がする。護りが強すぎる。これでは闇の遣いに手の貸しようもない」
大柄な男神の後ろに控えていた随神が応える。
「国津神を出し抜くとしたら、あの図書館でしょう」
「何故に? あの場所は神域だとそなたが申したのだぞ」
「神域だからこそです。内側から気づかれずに穢してしまえばよい」
「策があるのか――?」
「お任せください、兄上。国津神を出し抜いてやりましょうほどに」