高天原異聞 ~女神の言伝~
6 闇の穢れ
週末の放課後、すでに閉館時刻を過ぎ、美咲と慎也は帰り支度をしていた。
カウンターを片づけている美咲のところに近づいた慎也は、カウンターの上にある積み重なった本に目をとめる。
「美咲さん、この本戻してこようか?」
「あ、いいの。それ戻せないの」
「? 書庫行き?」
「違うわ。それ、図書館の本じゃないの」
美咲は困ったように積み重なった本に目を向けた。
「夜間の返却ポストにここ三日、二冊ずつ入ってるんだけど、うちの蔵書じゃないの。誰か、勘違いしてるみたい」
言われて、慎也は本の裏を確かめる。
確かに、ここの図書館の本ではない。
図書館の蔵書であるなら当然のように貼ってあるバーコードシールがなかった。
それ以前にブックコートもされていない。
「いたずら?」
「わからないのよ。古い本だから寄贈本としても扱えないし、忘れ物としてエントランスに置いておくべ
きなのか、山中先生と相談しなくちゃ――さ、もう帰りましょう」
カウンターの片づけが終わって、美咲が声をかける。
慎也は手に持っていた本をそのままカウンターに戻した。
鞄を持って一般用の玄関から出て行く。
美咲はそれを確かめて、鍵をかけた。
明かりを消すためにカウンターに向かったその時、背後で、カタンと音がした。
美咲はぱっと振り返る。
今の音は、返却ポストに本が入れられた音だ。
急いでエントランスに戻ると、玄関脇に備え付けられた返却ポストの蓋を開ける。