高天原異聞 ~女神の言伝~

 違う。
 違う。

 なぜそのようなことをおっしゃるのですか。
 あんなにも優しく私を愛しんでくださったのに。

 国津神の子。

 私が、貴方以外の方に身を任せたとお思いなのですか。
 貴方の妻でありながら、不義をはたらいたと。

――そなたの顔を、今は見たくない。帰るがいい。

 去っていく背の君。
 どんなに呼んでも、振り返らず往ってしまった。

 あんなにも幸せだったのに。
 喜んでくださると思っていたのに。

 どうして。
 どうして――

「――」

 見開いた目から、涙がこめかみを伝ってカウンターに落ちた。
 無遠慮な手が、スカートの中に入り込み、内腿を探る。
 絶望に、美咲は絶叫した。








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