高天原異聞 ~女神の言伝~
荒ぶる神は兄神がおいていった慎也に近づく。
気を失ってぐったりと床に倒れている慎也の胸に手を当て、神気を送る。
びくりと身体が震えて、目蓋が開いた。
「――」
「気がついたか」
見下ろす見知らぬ男を見て、慎也は眉根を寄せる。
外にいたはずの自分が図書館の中にいるのを怪しんでいるのが表情から見て取れる。
「あんた、誰?」
「建速《たけはや》と呼べ。敵ではない。お前と美咲を護る者だ。惚れた女を護りきれぬところは、神代と変わらんのだな」
「? ――美咲さん!?」
美咲の名前に、慎也は飛び起きる。辺りを見回す。
「カウンターだ。お前が意識をなくしている間に闇の遣いに襲われかけた」
「!?」
慎也がカウンターに駆け寄る。
「美咲さん!?」
美咲はカウンターに身体を投げ出した状態のままだった。
両手足は磔られた時のまま投げ出され、上衣ははだけられたまま、白い肌が露わになっていた。
慎也が裂かれたシャツをかきよせ、胸を隠す。
「美咲さ――」
気を失っているのだろうと美咲の顔を見た慎也はぎょっとした。