高天原異聞 ~女神の言伝~
美咲の目は、開かれたままだった。
虚ろな眼差しで、天井を見上げていた。
涙が、止めどなく流れ、唇がわずかに言葉を紡いでいた。
「美咲さん?」
耳を寄せ、言葉を聞き取ろうとした。
美咲は小さく繰り返していた。
違う、と。
「美咲さん、美咲さん?」
頬を軽くたたき、美咲を正気づかせようとしても、美咲は虚ろに泣きながら、違うと繰り返すのみ。
「どけ」
低い声が、慎也の背後から響いた。
大きな手が美咲の顎を掴み、覗き込む。
舌打ちが聞こえた。
「悪しき言霊を、吹き込まれたな――」