高天原異聞 ~女神の言伝~
「確かに、不思議な話だね」
「信じるの? 嘘かもしれないじゃない」
「美咲さんは、嘘つけないよ。すぐばれるもの。きっと、何かが守ってくれたんだよ」
「……何かが、守って……?」
慎也の言葉は、美咲の胸にすんなり落ちた。
確かに、何かが守ってくれたような気がしたのだ。
だが、言葉にすると、なんだか莫迦みたいに思えてきた。
どこも怪我していないのだから、ラッキーだと思って、それで終わるべきなのだ。
それなのに、どこか不思議な感覚を拭いきれずに、自分のほうが納得のいく説明をほしがっている。
だが、納得のいく説明など誰もできるわけがない。
あの場には美咲しかいなかったのだから。
「もう、この話はやめましょう。どうでもいいじゃない、こんなこと」
「どうでもよくない。美咲さんのことなら、何でも知りたいから」
こともなげな慎也に、美咲は朝の憂鬱な感情まで思い出してしまった。