高天原異聞 ~女神の言伝~
「では、繋ぎます」
何もない空間に徐々に闇の扉が顕れる。
闇の異界と呼ばれる黄泉大神の創り出した闇の檻だ。
確かに、扉の向こうに自分の神威が感じられた。
完全に扉の姿が顕れ、固定されたその時。
「!?」
「お気をつけ下さい!!」
闇山津見が叫んだ。
宇受売と神田比古が咄嗟に建速の前に神威を放ち、結界で盾を創り上げる。
扉の内から飛び出してきた、闇ではなく、禍つ霊が、盾にぶつかり弾ける。
衝撃で、火花が散った。
「どういうことだ」
建速は未だ神威を使ってはいない。
それなのに、檻は開いた。
しかも、内側から。
闇に揺らめく禍つ霊の神気が、神々の身を震わせる。
怒りと憎しみに満ちた禍々しい神気であった。
扉からゆらりと姿を現したのは――
「見つけたぞ、日嗣の御子。そなたのせいで、妹は死んだのだ……」
禍つ霊の比売神、木之花知流比売《このはなちるひめ》であった。