高天原異聞 ~女神の言伝~
黄泉国を震わせる衝撃が、無音とともにやってくる。
その時、闇の主が目覚めた。
闇の異界が、破られた。
その内に閉じ込めていた神霊が奪われた。
「何故、そなたが禍つ御霊を、伊邪那岐を、救ける……」
目覚めて何が起こったのかを理解した闇の主は唇を噛みしめながら、ゆっくりと身を起こす。
漆黒の長く艶めいた髪がさらりと流れる。
「そうまでして、我を拒むか――」
低く響く声音。
決して、自分とは真向かおうとしない女神に向けられた言霊。
「九十九神、黄泉軍を喚べ。伊邪那美の現世の身体ごと捕らえよ。抗うなら、身体を殺してでも神霊を引き戻せ」
――すでに向かわせました
――全て主のお望みのままに