高天原異聞 ~女神の言伝~

 ひどく、寂しい。
 何かが欠けたように。
 いつも自分を満たしていたものが、心の半分が、なくなってしまったようだ。
 凍てついた心を、何で満たせばいいのだろう。
 不意にそんな自分を覆い、貫く熱。

 熱い。

 凍えきった身体にはそれは痛みのようだ。
 誰かが自分を呼んでいる。
 遠くて、聞こえない。
 だが、その声音は哀しく、切なく、自分に響く。

 そんな風に、呼ばないで。

 応えたいのに、言葉が出ない。
 熱が何度も突き上げてくる。
 熱い。
 熱い。
 まるで、最後の子を産んだ時のよう。
 そう思って、ふと気づく。

 愛しい最後の子は、何処へ逝ってしまったのだろう――








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