高天原異聞 ~女神の言伝~
「――」
溜息をついて、美咲は足に力を入れた。
今度はちゃんと立ち上がれる。
階段を下りて、散らばった本と台帳を拾おうとしたが、
「雨がまだ降ってたら、相合傘しようね」
慎也の立ち上がりざまの呑気な台詞に、たまらず振り返る。
「今日も一緒に帰る気なの!?」
悲鳴じみた美咲の問いに慎也はきょとんとする。
「当然でしょ? 俺達、恋人同士になったんだから」
「なってません!!」
むきになって否定する美咲に、慎也はいたずらっぽく笑った。
「なってないの? 好きだって言ってくれたのに?」
慎也が美咲の腕を掴んで引き寄せる。
「あんなにキスしたのに、恋人じゃないの?」
一気に距離が近づいた。