高天原異聞 ~女神の言伝~

「ちょ――何するの」

「もう一回キスしようかなって――美咲さんが、早く恋人になってくれるように」

 慎也の顔が近づく。
 美咲は咄嗟に手を上げて慎也を止めた。

「――わ、わかったわよ。一緒に帰るから!」

「俺達、恋人同士になったんだよね?」

「なったから! なったから、離れて!!」

「じゃ、帰れるときはいつも一緒に帰ろうね。心配性の美咲さんのために人通りの少ないとこ通るから」

 にっこり笑って、慎也はぱっと手を放すと、何事もなかったかのように美咲が落とした本をさっさと拾い上げる。
 その表情は、声を出して笑いたいのをこらえているように見えた。

「――からかってるでしょ」

「わかった?」

「わかるわよ!!」

 怒った美咲は慎也から本を奪い返すと、ずんずんと歩き出した。



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