高天原異聞 ~女神の言伝~
6 目覚め
言霊が響く。
それは、大気に満ちていた。
――男神と女神が心通わせた。
――寿ぎを。
――黄泉返りし女神とともに、男神もまた甦った。
――言褒ぎを。
――中つ国に男神と女神が還りこした。国津神々が幸《さき》わいでいる。
――言誉ぎを。
――神代の世界が甦る。美しき豊葦原の中つ国が甦る。
――言祝ぎを。
大気が澄んだ音を響かせた。
喜びに、世界が優しく震えた。
美しい言霊が、神々の帰還を言祝ぐ。
最初に目覚めたのは、水と風だった――