高天原異聞 ~女神の言伝~




 月のない暗闇の中。

 傍らには、意識のない神々の憑坐が倒れている。
 それを見下ろす死神《ししん》は、密やかにほくそ笑む。

――もうすぐだ……

 闇に溶け込むように響く言霊。
 さらに漆黒の外套を身に纏うかのように、濃い闇がその死神の輪郭を覆い隠している。
 
 そろそろ、国津神々達も気づき出すだろう。
 自分をおびき寄せるために、荒ぶる神が動き出す。
 それこそを、待っていた。

――もうすぐ、迎えに往く。そなたを、取り戻してみせる

 そなたがいれば、それでいい。




























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