高天原異聞 ~女神の言伝~
2 神々の思い
――往くのか。
――往かねばならぬ。それが、俺の天命だからだ。
最後に残したくちづけは、初めての時のように強引で、熱く、荒々しかった。
有り得ぬのに、愛されていると勘違いしそうになる程に。
身支度を整えて出て往く後ろ姿を、褥の中で見送った。
追い縋ることなど出来なかった。
自分を愛さぬ男を引き留めてどうなる。
所詮、誰も愛することなど出来ぬ男だ。
自分を振り回すだけ振り回して、去っていく。
わかっていたのに、何故受け入れてしまったのか。
それだけが悔やまれる。
何一つ思い通りにならぬ男との、これが別れだった。