高天原異聞 ~女神の言伝~
慎也が葺根と八塚と共に出てくると、美咲は建速に別れを告げ、慎也と共にアパートへ戻った。
風呂から上がって髪を乾かして居間へ戻ると、慎也がベッドにもたれて居眠りをしていた。
自分にとっても長い一日だったが、慎也にとってもそうだったろう。
疲れていて当たり前だ。
「慎也くん、起きて。寝るならベッドに入って。風邪引いちゃう」
肩を揺すると、目を覚ました慎也が抱きついてきた。
「ああ、よかった。美咲さんがいる」
「何よ。どこにも行かないわよ」
「うん。何度でも、引き止めるよ。黄泉国には、行かせない」
「……慎也くん」
優しく抱きしめられて胸が高鳴る。
きっと、何度抱きしめられても、慣れることなくときめくのだろうと美咲は思った。
今ここにいてくれる慎也が愛しくてたまらなかった。
「キスしてもいい?」
囁かれて、静かに頷く。
美咲が顔を上げると、慎也が優しく唇を合わせてきた。
舌が絡み合い、吐息が混じり合う。
そのまま床に倒れ込んでいくところで、
「!?」
二人は、同時に異変を感じた。
空間を超えて、何か凄まじい気配を感じる。
この気配は――?
体を起こすと、美咲と慎也は図書館へ繋がれた玄関へと向かった。