高天原異聞 ~女神の言伝~

 まさかこのまま、最後までということはありえないが、ほんの少し、不安が頭をよぎる。
 だが、その不安を呼び水に、突如わきあがる快感以外の感覚に、熱が冷えるように、我に返る。

「……」

 手を伸ばして慎也の手を離そうとするが、力が入らない。
 それでも、訳のわからない不安に駆られて、美咲は弱々しい抵抗を繰り返す。

「お願い……いや……」

「――」

 涙声で訴える美咲に、慎也は身体を離す。
 しばらく美咲を見下ろしていたが、軽く息をついてさらに一歩下がった。

「――資料、見つけてくる。美咲さんはそこにいて」

 返事を待たずに、慎也は奥の書棚へ向かう。
 美咲は何とか身体に力を入れて、書棚から下りた。



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