高天原異聞 ~女神の言伝~
「ちょっと、ここカウンターなのよ!!」
「もう誰もいないよ。カーテンもしまってるし」
「そういうことじゃない!!」
「じゃあ、書庫に行こうよ」
カウンターを回りこんで傍に来た慎也は美咲の腕を掴む。
「もっと嫌よ、お化けが出たらどうするのよ」
「出ないよ、そんなの」
「嘘、だって、学校の怪談は本物だって言ったじゃない」
「ああ――そう言えば美咲さんが怖がって抱きついてくれるかと思って」
美咲は唖然とする。
「人が怖がってるの楽しむなんて!」
振り払った手で、美咲は慎也の肩をたたいた。
「いた、ごめん、美咲さん、いたいって――」
どこまでが本気かわからない慎也の言動に頭にきた美咲は、力はそんなにいれないまでも何度も慎也をたたく。
「ちょっと、美咲さん、ごめんって」
「人のことからかってばっかりで、しらないっ。学生は早く帰りなさい!」
慎也を押し退けると、美咲は脇をすり抜けて図書準備室へ向かう。
だが、後ろから抱きすくめられて、それ以上身動きが取れない。
「放して!」
もがく美咲を、ますます強く抱きしめる。
「ごめんね、美咲さん。でも、すごく好きだから美咲さんのそばにいつもいたいんだよ」