高天原異聞 ~女神の言伝~
4 近づく距離
「ここが美咲さんの部屋か」
ドレッサーの小物を見回しながら、素直に慎也は感心していた。
「そんなのが珍しいの?」
「俺、一人っ子だから。女物の小物、あんまり見たこと無いんだ」
コーヒーを出されると、慎也は大人しくドレッサーから離れた。
「いただきます」
コーヒーを飲みながら、二人は互いのことを話し合う。
家族や生い立ち、いろいろなことがわかるたびに、美咲は嬉しくなる。
この部屋に二人だけでいるときは、歳の差も人目も気にしなくていいのだ。
こんなことなら、もっと早く部屋に入れてやればよかったと美咲が思い始めたところで、
「美咲さん、キスしていい?」
慎也が明日の天気を聞くように問うてきた。