高天原異聞 ~女神の言伝~
「女神の黄泉返りとともに、我らも目覚めたのは造化三神のお導きですか?」
女が問う。
「造化三神は、すでに御隠れになった。戻ることはあるまい。これは、女神の意志だ」
「女神の……? 何ゆえ、今?」
荒ぶる神は首を横に振る。
「女神でなければわからん。だからこそ、早く女神には記憶と神威を取り戻してもらわねば」
「ならば、女神と男神は安全な場所にお連れしたほうがよいのでは?」
「あの図書館には神霊の集う御柱がある。一種の結界だ。穢れを祓うゆえに最も安全であろう」
「図書館はよいかもしれませぬが、高校は無防備です。男神が危険では?」
「男神か――とりあえず危険はあるまい。黄泉神の狙いは女神だけだからな。神威が感じられぬから、九
十九神も容易くは女神を見つけ出せぬのだ。お前は引き続き女神の傍に。もう戻るがいい」
「御意に」
女は礼をしてから去っていった。