高天原異聞 ~女神の言伝~
「――」
涙がこめかみを伝う感触に、美咲は目を覚ました。
見慣れた天井が暗がりの中に見えた。
だが、それはすぐに滲んで霞んだ。
涙が溢れて、止まらなくなった。
夢を見た。
いつもの幸せでおぼろげな夢ではなかった。
夢の続きのように、美咲は泣く。
裏切られた悲しみと切なさで、胸が痛い。
布団を頭からかぶって、自分の身体を抱きしめるようにかばった。
夢なのに馬鹿げている、と思い込もうとした。
だが、胸の痛みは現実に美咲を打ちのめしている。
桜の花びらが散るのを物思いに囚われながら見ていたことを思い出した。
春が来るたび感じた胸の痛み。
あれは、この夢のせいだったのか。
身に覚えのない夢のために、美咲は泣き続けた。