高天原異聞 ~女神の言伝~
中休みの終わりの鐘が鳴って少しした頃、生徒用の渡り廊下の扉が開いて、慎也が入ってきた。
「おや、3時限目は自習になった?」
山中が声をかける。
「うん。暇だから来た」
昨日の甘い時間が思い出されて、美咲の胸が震える。
けれど、同時に今朝の夢までが思い出されて、たちまち高揚していた気分が切なさに変わった。
あれは夢なのに。
どうして慎也と重なるのだろう。
「山中先生、書庫の本借りていってもいい?」
「いいけど、探せる?」
「多分。ダメならヘルプするから」
「藤堂さん、手伝ってあげて。その方があなたもはやく書庫の蔵書を覚えるだろうし」
「わかりました。これを済ませたらすぐ行きます」
「よろしく、美咲さん」
お辞儀をして、慎也はカウンター奥の書庫に入っていった。