高天原異聞 ~女神の言伝~
「あの子も変わったわね。よかった」
「――変わったって、し――時枝くんに、何か問題でもあったんですか?」
「んー、頭はすごくいい子なんだけどね、普通、あのぐらいの男の子ってもっと子どもっぽいとこあってもいいのに入学したてから、めちゃめちゃ大人びててね。クラスでもほとんど誰とも口聞かずに、図書室で難しい本ばかり読んでたわ。喜怒哀楽がほとんどなくてね、心が何処にもないみたいに、いつも淡々としてた」
「淡々とって、本当ですか? 想像つかないんですけど」
「そうよね。藤堂さんは今年の彼しか知らないから」
「山中先生や私とは普通に話してますけど、他の先生とも口聞かないんですか」
「必要最低限しかね。私とだって、最初の半年はほとんど口聞いてくれなかったわよ。司書だから本のこと話すようにしてみたら、段々打ち解けてくれて。普通に話せるようになったとき、すごく嬉しかった。懐かない猫が懐いたみたいに。しかも、あんなかっこいい男の子よ」
最後の台詞に美咲は思わず笑ってしまった。
「ホントはうちみたいな学校じゃなくて、もっと有名な付属に行けたのに、ここがいいって他蹴ってここに来たって。彼、入試満点だったの、我が校歴史始まって以来よ」
「そ、そんなに頭いいんですか、彼」
「日本一の大学現役合格できるくらいね。それどころか外国の超有名大学も余裕で行けるそうよ」
「何で、ここに……?」
「そうよね。私もそう思って聞いたの。そしたら、この図書館が好きなんだって言うのよ。ここにいたら、誰かに逢えるような気がするって」
その言葉に、美咲はどきりとする。