高天原異聞 ~女神の言伝~
暗闇に舞い散る薄桃の花弁。
去っていく愛しい背の君。
こみあげる想い。
往かないで。
戻ってきて。
走り去る貴方の背に、何度も呼びかけた。
貴方は振り返ってはくれなかった。
闇の中に浮かび上がる薄桃色の花弁が、貴方の姿をかき消していく。
涙にけむる視界を、何度も何度も遮る。
貴方は戻ってこない。
あとには降り注ぐ花びらだけ。
どうしてなの。
信じていたのに。
自分は置き去りにされた。
約束したのに。
一緒に還ろうと。
それなのに。
貴方は私をおいて独り逃げた――