高天原異聞 ~女神の言伝~
「俺、今が一番楽しい。美咲さんに会うまでは、正直、何しててもつまんなかった。特にしたいことも無かったし、全部どうでもよかった」
美咲は山中の言葉を思い出した。
感情を表に出さない、淡々と一人本を読んで過ごす慎也。
自分は、今までそれなりに楽しく、充実した毎日を送ってきた。
友達だっているし、学生のときもそれなりに楽しんできた。
だが、慎也にはそんな思い出が何一つ無いというなら、自分に逢うまでそんな寂しい生き方しかできなかったのなら、可哀想過ぎる。
「美咲さんに、初めて会ったとき、すごく嬉しかった。それからは、毎日嬉しくて、楽しい。少しでも長く美咲さんといたい。いつでも、美咲さんを見ていたいし触れていたい。早く、抱きたい」
ストレートな告白に、胸が熱くなる。
「赤くなってる美咲さんも可愛い。ね、キスしていい?」
「――だから、そういうこと言わないで」
「じゃ、黙ってするけど怒らないでね」
言うなり、慎也は美咲の頬を両手で引き寄せてくちづけた。
そのまま舌が入り込み、角度を変えて何度も口腔内を探られる。
甘いキスで、美咲はそれ以上抵抗できなくなる。
愛しさを隠さず求められて、美咲もできるだけ応えた。