高天原異聞 ~女神の言伝~

 二時間後に。

 そう言って、慎也は勤務時間を終えた美咲をアパートの前まで送ると、一旦自宅に帰っていった。
 その間に、美咲は今朝の朝食の後片付けをし、簡単に部屋を整えてからシャワーを浴びた。
 髪を乾かすと、鏡に映った自分の姿を見た。
 いつもは横髪を後ろに結い上げているが、今はそのままだ。
 いつもは薄くしている化粧もしていない。
 洗ったばかりの部屋着のワンピースに素足。
 これから慎也が来るなら、もっときちんとした格好をしたほうがいいのだろうか。
 だが、今更というような気もして、それもためらわれる。
 迷っているうちに、時間ばかりが過ぎていく。
 時計を見ると、もうすぐ約束の九時だ。
 慌てて、脱衣所を出ると、もう一度部屋を見渡す。
 ベッドのシーツは替えたし、ドレッサーの小物も片づけた。
 引き戸で仕切られた台所とトイレはすでに片づけ終えた。
 脱衣所の洗濯機は乾燥に切り替わっている。
 ナイトモードにしておいたから、朝までは大丈夫。
 もうすぐ慎也が来て、この部屋ですることを考えると、胸がどきどきする。





< 96 / 399 >

この作品をシェア

pagetop