高天原異聞 ~女神の言伝~

「……上がって」

「お邪魔します」

 礼儀正しくそう言うと、慎也は屈んで靴を脱いだ。

「何か食べる? それとも飲む?」

 美咲はキッチンに用意していたティーセットをとろうと一歩踏み出したところで、慎也に後ろから抱きすくめられた。

「――」

「何にもいらない。美咲さんが欲しい」

 耳元でささやかれて身体が熱くなる。

「今すぐ?」

「今すぐ」

 慎也の手が胸元を優しく探る。
 もう拒めない。
 流される前に、美咲は声を出す。

「明かり、消させて……」

「いいよ」




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