スリーポイント
──ガチャッ
玄関の開いた音にビクッとし、つい持っていたカップを落としてしまった。
「っ!」
わわ、手が滑っちゃった…!
カップは割れなかったものの、紅茶は溢れ、静かな家に音が響く。
嘘、どうしよう…!
ちらりと時計を見ても、まだ16時半過ぎだから兄が帰ってきたワケじゃない。
溢れた紅茶を急いで拭いていると、どこか冷めたような声が聞こえた。
「果歩、何してるの?」
声を聞いた途端、床を拭いている手が止まった。
聞きたくない。
逃げたい。
お母さんなんて、…キライ。