TAKE MEDICINE この世界で誰が正常でいられると?
「……疲れたなぁ」

ふと舞香が呟く。
その表情は陰鬱で、見ているこちらまで気分が沈んでしまうほど。

きっと舞香は壊れていない。
まだ意思を持っているし、死ぬことを恐れているのだから。

そしてこうやって冷静に物事を判断できるわたしはすごいと思う。
自惚れだけど、確にそう感じた。
食欲は湧かないけれど、みんなの様子を窺ってああだこうだ考えることができるのだ。

正常。
たぶん、正常。
まだ、大丈夫。

そうやって自分に聞かせていたとき、隣に人の気配を感じた。
驚いて隣の方を向くと、そこには疲れきった顔をした桧野がいた。
昨日と打って変わって生気が感じられない。
一体どうしたのか、わたしは不思議に思って尋ねてみる。

「どうしたのそんな顔して」
「疲れた」

わたしの問いに、間入れずに桧野が答える。
こっちも舞香と同じこと言っちゃってるよ、と心の中で呆れつつ、言葉をかける。

「いつもにまして疲れているみたいだけど」

わたしの言葉に、桧野の表情が微妙に変化した。
さっきまでだらしなく開かれていた口はきゅっときつく閉じられ、虚ろだった瞳は床を見つめている。
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