TAKE MEDICINE この世界で誰が正常でいられると?
「だけどな、なんか、本当にもう……嫌になるんだ」

桧野は自分の手を体育館の電灯に翳しながら、そう呟いた。
わたしは何も言わずに、次の言葉を待つ。
隣にいる舞香はまだ宙を見つめている。

「みんなが泣いて死にたいって叫んでいると、自分の無力さが手に取ったように分かる」

そう言い終わらないうちに、力尽きたように俯いてしまった。
そして彼の首筋、否、全体が震えていることに気付いた。

「……桧野?」

これは様子がおかしい。どうしたのだろうか。
まさか彼まで壊れてしまったなんてことはないだろうか。
襲い掛かる不安を取り払いながら、わたしは桧野の顔を覗き込んだ。

そんなとき、ぽつりと床に大粒の雫がはねた。
それが桧野の涙だということはすぐに分かった。
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